突出した瞬発力を誇る美少女が、2歳女王による61年ぶりの偉業を阻止した。
第78回桜花賞(4月8日、阪神芝外回り1600m、3歳牝馬GI)を制したのは、クリストフ・ルメールが手綱をとった2番人気のアーモンドアイ(父ロードカナロア、美浦・国枝栄厩舎)だった。61年ぶり、史上2頭目の「2歳女王による無敗での桜花賞制覇」を狙ったラッキーライラック(父オルフェーヴル、栗東・松永幹夫厩舎)は2着に敗れた。
最後の直線で大逆転劇が起った。
1番枠から出て先行した1番人気のラッキーライラックが、ラスト400m地点を過ぎたところで満を持して追い出された。
歴史的名牝の誕生を確信した観衆のボルテージが上がった。しかし次の瞬間、歓声に驚嘆のどよめきがまじり出す。
直線入口では先頭から7、8馬身離れた後方2番手にいたアーモンドアイが、大外から凄まじい脚で伸びてきたのだ。
ラッキーライラックがラスト200m地点で先頭に立った。
アーモンドアイはその3馬身ほど後ろにいたが、勢いの差は歴然としていた。ラスト100mほどのところで並ぶ間もなくかわすと、最後は流すようにして、ラッキーライラックに1馬身3/4差をつけてゴールした。
ルメール「瞬発力はアンビリーバブル」
勝ちタイムは1分33秒1のレースレコード。厩舎の先輩で、2010年に牝馬三冠を制したアパパネの記録をコンマ2秒更新した。
この勝利により、ルメールは武豊と蛯名正義につづく、史上3人目のJRA牝馬GI完全制覇(桜花賞、オークス、秋華賞、ヴィクトリアマイル、エリザベス女王杯、阪神ジュベナイルフィリーズ)を達成した。
「後ろから、直線ですごい脚を使ってくれました。直線では自分から走って、すごくバランスがよかった。瞬発力はアンビリーバブルでした。大人になってパワーアップしていた。自信はありました。距離だけが心配でした。スタートのあとスピードが乗らなかったですが、ラスト20mは素晴らしかった」
一昨年はメジャーエンブレム、昨年はソウルスターリンクと断然人気の馬で敗れていただけに喜びも格別だったようだ。
可愛らしい顔にそぐわぬ破壊力。
8頭出ていたノーザンファームの生産馬が1~3着を独占した。
ともに世界を驚かせたロードカナロアとオルフェーヴルという新種牡馬の産駒のワンツーフィニッシュだったのだが、アーモンドアイの強さばかりが目立った。「世界のロードカナロア」がスプリントGIで見せた末脚をここで繰り出した、と言っても大げさではないほどのパフォーマンスだった。
なお、ロードカナロアにとっては、これが産駒によるGI初制覇であった。
アーモンドアイは「美人とされる顔の目の形」という意味だ。馬名のとおりの可愛らしい顔からは想像もつかないような、凄まじい破壊力を見せた。
桜花賞で、勝ち馬がこれほどの衝撃をファンや他馬陣営に与えたのは、2着を8馬身突き放した1987年のマックスビューティ以来ではないか。61年ぶりの完全女王誕生はならなかったが、31年ぶりのインパクトを、私たちは感じることができたと言えよう。
次走はオークスで、陣営はアパパネ同様、牝馬三冠を目標にしていくようだ。
「長い距離でもイケるし、オークスも勝てると思う。トリプルクラウン(三冠)を考えることもできる」とルメール。